――新学期3日目から始まる本当の学級づくり
新学期が始まって、今日で3日。
少しずつ子どもたちも学校の雰囲気に慣れてきて、教室の中に笑顔や会話が増えてくる頃かもしれません。
でも、ここからが本当の学級経営のスタートです。
よく「黄金の三日間」という言葉が使われます。
たしかに最初の3日間は、子どもたちに担任としての姿勢を示し、学級の土台を築くうえで大切な期間です。
しかし僕は、それ以上に大事なことがあると思っています。
それは、3日目を過ぎてからの教師の「一貫した対応」です。
子どもたちは、教師を試し始める
新年度のスタート直後、子どもたちは「新しいクラス」「新しい先生」の様子を観察しています。そして、3日目あたりから少しずつ“試す”行動が見え始めるのです。
「これをやっても怒られないかな?」
「先生は、どこまで本気で言ってるんだろう?」
「誰がクラスの中心になりそうかな?」
そんなふうに、子どもたちは日々のやり取りの中で、教師の“軸”や“本気度”を感じ取ろうとしています。
ここで教師が迷ったり、指導がぶれてしまったりすると、子どもたちは「ここでは少しくらいなら許されるかも」と受け取ってしまいます。すると、ルールが曖昧になり、クラスの雰囲気が乱れやすくなる。最初は小さなほころびでも、積み重なると大きな混乱へとつながる可能性もあります。
一貫した姿勢で、子どもを守る
大切なのは、何を許して、何を許さないかを明確に伝えること。
特に、「人権を傷つけるような言動や行動」に対しては、絶対に許容しないという姿勢を、一貫して示すことが重要です。
ここで曖昧な対応をしてしまうと、「あの子が言っても大丈夫だった」「ちょっとならいいかも」と、クラス全体が感覚を麻痺させてしまうこともあります。
一方で、些細な言葉遣いやちょっとしたルール違反まで、すべてに対して強く叱る必要はありません。
学級内で決めた「みんなが安心して過ごすための決まり」に照らし合わせて、冷静に伝え、必要なときは対話を通じて指導することが大切です。
ここで大事なのは、指導の基準が「先生の好き嫌い」にならないこと。
「なんでこれがダメなのか」「何のためのルールなのか」――それを、教師自身が言語化できるようにしておくと、子どもたちも納得しやすくなります。
叱ることは、信頼される先生の条件にもなる
ところで、「好きな先生ランキング」でよく上位に入るタイプの先生、どんなイメージがありますか?
たいていの人が思い浮かべるのは、「優しい先生」かもしれません。もちろんそれも間違っていません。でも、意外にも子どもたちが好きな先生の中に入っているのが――きちんと叱ってくれる先生なんです。
ちょっと意外ですよね。
でもこれには、こんな理由があります。
「ダメなものはダメ」とはっきり伝えてくれる先生が担任でいてくれたら、自分が嫌な思いをしたとき、きっとその加害生徒をちゃんと叱ってくれる。つまり、自分たちを守ってくれる人だと思えるからです。
きちんと叱ることは、子どもたちからの信頼にもつながり、学級での問題行動の抑止力にもなるというわけです。
やさしさと同じくらい、「叱ること」も子どもたちにとっては大切な安心材料なんですね。
「ダメなものはダメ」を、怖がらずに伝える
若手の先生たちの中には、注意することに少し怖さを感じる人もいるかもしれません。
でも、僕はこう思っています。
注意することは、子どもを否定することではない。
むしろ、その子を守るための行動であると。
「ダメなものはダメ」と言えること。
それは、学級の安心感を守るための柱であり、すべての子どもたちにとっての「安全な教室づくり」につながります。
問題が起きるのは、ある意味当然のことです。
むしろ、子どもたちはそれを通して、社会性や共に過ごす力を学んでいきます。大事なのは、問題が起きたときにどう関わるか。その時の教師の姿勢こそが、子どもたちの信頼につながるのだと思います。
ぶれない背中が、学級の安心感をつくる
新学期のスタートダッシュも大切だけれど、本当に大事なのはここから先の毎日。
教師としての一貫した姿勢と、揺るがない軸を持ち続けることが、子どもたちの安心感を生み出します。
ダメなものはダメ。
でも、それ以外の部分では、子どもたちの思いや葛藤に寄り添いながら、一緒にルールの意味を考えていく。
そんな日々の丁寧な積み重ねこそが、やがて「信頼」となり、「学級の力」へと変わっていくはずです。
今年度は、まだ始まったばかりです。
たった1日うまくいかなかったくらいで、学級が崩れるなんてことはありません。
焦らず、じっくり落ち着いて、子どもたちと関わっていきましょう。

大丈夫、あなたならきっとできるから。応援してるよ。
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