ーー担任としての本当の勝負は、毎日の積み重ねにある。
教員の世界には「黄金の三日間」という言葉があります。
新学期が始まって最初の3日間をどう過ごすかで、その後の学級経営が決まる――そんな意味で使われることが多く、特に初任者や若手の先生ほど「とにかくこの3日間が勝負だ」と、強く意識するものです。
たしかに、この「黄金の三日間」は重要です。
担任として最初に子どもたちにどう関わるか、どんな空気を作るか、どんな姿勢を見せるか。この数日間で、子どもたちは「この先生はどんな人か」「このクラスはどんな場所になりそうか」と肌で感じ取ります。ルールや約束の共有、生活リズムの確立にも関わる、大切なタイミングであることは間違いありません。
でも、僕はこの「黄金の三日間」という言葉を知っている上で、それがすべてではないと、はっきり伝えたい。
なぜなら――
子どもたちとの1年間の学級づくりが、たった3日で決まるはずがないからです。
3日間が大切であることに異論はありません。
でも、「3日間だけ頑張ればあとはなんとかなる」といった考え方には、強く疑問を持っています。むしろ、その後の1週間も、1ヶ月も、半年も、一年間すべてが、学級をつくっていく上で大切な時間です。
担任というのは、1年365日、常に子どもたちを見て、考えて、関わり続ける存在です。
日々の積み重ねの中でしか、本当の信頼関係は生まれませんし、学級という「場」も育ちません。
僕自身、「1学期は特に気が抜けない」と感じています。
なぜなら、1学期こそが“学級の基盤”を築く時期だからです。
ルールや約束をどう定着させるか、子どもたちがどれだけ安心して過ごせる空間をつくれるか。信頼関係を結ぶには時間がかかりますし、先生からの一方的な関わりだけでは築けません。子どもたちと対話し、悩み、試行錯誤する日々こそが、やがて子どもたち自身がクラスを支える側になっていく準備になるのです。
僕は、学級の担い手は、徐々に先生から子どもたちへと移っていくべきだと思っています。
そのためには、1学期のうちに「決まりごとの徹底」や「関係づくり」を丁寧に行っていく必要がある。そうして2学期以降、子どもたちが少しずつ自分たちで考え、動けるようになっていく。そのプロセスを支えるのが、1学期の担任の仕事だと思うんです。
だからこそ、「黄金の三日間」だけにとらわれるのではなく、むしろ「一日一日が黄金である」くらいの意識で、毎日を大切に過ごすことが何より重要だと感じています。
もちろん、担任としての毎日は楽なものではありません。
でも、その一日一日の積み重ねこそが、子どもたちにとってかけがえのない時間になり、やがてクラスという「共同体」を育てていく土台になります。
たった3日で学級が完成することなんて、ありません。
でも、毎日を大切に重ねていけば、いつか必ず「このクラスで良かった」と思える瞬間がやってきます。
だからこそ僕は、今日も、明日も、目の前の子どもたちと真剣に向き合っていきたい。
担任という仕事の責任の重さと、やりがいを胸に抱きながら――。
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