都立入試を終えて 入試制度このままでいいの?
21日(月)に都立入試が行われました。
数学科として、僕も入試問題を解いてみました。
結論から言うと、「例年並みの問題」。計算ミスって満点取れなかったのは見逃してください。
Twitter等で見てみると、社会が難化していたようですが、数学はこれまで同様の受検対策をちゃんと積み重ねれば8~9割はいけそうな問題でした。
「う~ん、こんなんでいいものか……。」
結局求められるのは、入試での得点力(いわゆる「受験数学」を解く力)なんだなと……。
昨年度から、今年度の観点別評価の変更に伴い、いくら評価を見直して授業改善、テスト問題の工夫に力を入れてきたところで、生徒にも保護者にも求められるのは「受験に通用する学力の習得」なのだと……。
僕はここにものすごく違和感と不全感を抱きました。
この2年間は何だったのか……。
学習指導要領の改訂に伴う授業改善
令和3年度、学習指導要領の改訂に伴い、「学力の3要素」が明確化され観点別評価の観点が新しくなりました。
それに伴い、授業では「主体的・対話的で深い学び」の実現のため「授業改善」が求められました。
生徒が学習や人生で「見方・考え方」を自由に働かせられるようにするためには、話し合い活動だけでは不十分である。
「話し合い」+「深い探求」が必要であり、それこそが今の時代の教師に求められる「子どもたちが主体的に学習や諸活動に取り組む態度を養う」ことである。
と……。
今の中3はこれまでの4観点から3観点に変わり、普段の授業でも「主体的・対話的で深い学び」を意識して取り組んできました。
3年くらい前から、話し合い活動やICT教材を使った探究活動など、新しい取組をたくさん試しました。
もちろん、授業だけではなく、定期テストの在り方も考えなければならない時期になったのだと現場の教員もどのような問題を出そうか、どうやって評価をしようかと試行錯誤の日々でした。
あー!それなのにそれなのに!
都立入試、おおむね例年通りだったけど?
学校の授業とは別物の受験数学だったけど?
大学入試だって変わってんだから、来年度もしくは再来年度にはさすがに変わるよね?
学校でのテスト 試験問題の工夫は誰のため?
定期テストのたびに、生徒からは「難しい」、保護者からは「適正ですか?」と……。
近隣の学校で行われている定期テストは教科書や問題集の切り抜きのような問題ばかりで、授業プリントや問題集丸暗記でイケちゃうレベル(管理職はちゃんと確認してんのか)。
塾に行って対策できる生徒はいいが、経済的な理由で塾に行けない生徒はどうするのか。
そういった生徒に対しては結局、放課後に受検対策の補習教室を開いたり、授業で過去問を解かせたり……。
そのために、教科書の内容は1月までに早めに終わらせ、受検対策。受検が終われば、消化試合的な授業ばかり。
まぁ、観点の3要素が変わった初年度であること、コロナで十分な学校生活が過ごせなかった地域もあったこと、さまざまな要素があったことはたしかです。
とはいえ、試験の形式が変わらない以上、学校での取組(話し合い活動を主とした対話的で深い学びの実現に向けた取組やそれに伴う評価の考え)は意味がないのではないかと思ってしまいます。(生徒や保護者から求められていないという意味で)
絶対評価の闇 評価の実態
現在の都立の入試制度は、
学力検査:内申点=7:3(総合得点1000点として)
の割合となっています。
これ、内申点(学校生活での成績)を反映させないと「学校行かなくても当日点数取れば合格できちゃう」というのを防ぐための手段であるとは思うのですが、このおかげで現場の先生たちは大変な苦労をしています。
なぜなら評価のつけ方は、学校に委ねられているからです。
20年前までは「相対評価」で成績はつけられていました。
これは、生徒を成績順に並べて上位から順に
7%に5、
24%に4、
38%に3、
24%に2、
7%に1
とつけるという基準がありました。
学校での成績は「絶対評価」でつけられています。
達成度が
50%以上であれば3、
80%以上であれば4、
90%以上であれば5
というように。
つまり、学年の生徒全員が50%以上の達成率であれば、みんな3以上の成績がつくということです。
ですが、実際はそうはいきません。
成績が1、2のつかない場合は、評価の仕方が不適切であるとされ、再度付け直しを命じられます。
さらに、恐ろしいことに教育委員会からはそれぞれだいたいこのくらいの割合になるようにと、管理職に基準が言い渡されます。
次のように……。
- 1と2あわせて20%を超えない(1は5%、2は15%)
- 4と5あわせて45%を超えない(4は25%、5は20%)
え、これって相対評価じゃ……。
このようにして、公立学校では成績の差を生まないように工夫という名の操作が横行しています。
実際には、教育熱心な地域(家庭の経済レベルが高い)と家庭教育が行き届いていない地域(反対に経済レベルが低い)の生徒の平均学力はかなりの差があるように感じます。
それでも、学校ごとに1~5で成績を付けなければなりません。
ですが、評価をつけるための定期テストの問題は学校によって、先生によって異なるわけです。
で、それが入試得点に反映されてしまうわけです。これって大変なことですよね。
もう学校ごとに、先生ごとに違うテストで成績つけるのやめませんか?
全国学力調査みたいなもんやるんなら、都道府県ごとでいいから年2~3回で全学年対象、同日開催にしてその成績を評価するってすればいいんじゃないですか?
採点基準さえ用意してくれれば、現場の我々が採点くらいはしますから、そのくらい文科省や都教委がやってくれてもいいんじゃない?
よっぽど教員の業務削減、働き方改革につながると思うけど、どうですか?
未来の先生に向けて
最後にまだ学校現場に立ったことのない未来の先生へ僕からのメッセージです。
今、恵まれた学校現場でのボランティアやたくさんの実践事例が書かれた教育書を読んで来たる新年度を待ち望んでいる先生も多いことでしょう。
僕の記事をここまで読んでくださっている未来の先生には覚悟しておいてほしいことがあります。
合格が発表されたあの日に抱いた自身の教育理念を曲げながらも、やりきれない思いを抱えながら教育委員会からの通達と保護者・地域からの要望に板挟みの日々がこれからやってきます。
あんなに意気込んで考えた指導案が、いともたやすく指導担当のベテラン教員によって潰されてしまうこともあります。
こんなに時間をかけて作り上げた「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた授業実践やそれに伴う評価の改善は、変わらない入試制度によって無駄だったのではないかと、思わせられる日が来ることもあります。
今の学校現場は、エネルギーが弱まっています。
いじめ問題・新型コロナウイルス感染症対策・新学習指導要領の実施に伴い、求められる授業と評価の改善・特別支援教育・GIGAスクール構想など、抱える問題が増えすぎていて、現場の教員も正直参っています。
おかしいことをおかしいと言えず、自分さえよければそれでいい。
いくら残業したって給与はおろか管理職からの評価も変わらない。
権利を主張すれば鼻で笑われ、ベテランや管理職から「つべこべ言うな、これだから今の若手はダメだ」と怒鳴られたり無視されたり……。
人権なんてあったもんじゃない。
それでも、ベテランや管理職からの理不尽な指導に屈せず、教委や保護者・地域の言いなりにならず、自分の教育理念に火は灯し続けてください。
お願いだから、どうか腐らないで。
令和の学校教育には、皆さんの力が不可欠です。
令和の教育を代表するICTを活用した授業は、グーグル認定講師、アップルティーチャーなどの資格を有する、あなたの方がきっと上手です。
同じ学校に配属されたら、ぜひ教えてください。
おわりに
あなたが現場にやってくる頃には、今の学校が少しでも見直され、改善されているように僕たちも頑張ります。
教職員が働きやすい環境を目指して、
向上心ある教員が認められる職場を目指して、
子どもたちにとって実りある学びが得られる学校教育を目指して……。
コロナ対応等で大変な時期ですが、一緒にがんばりましょう。応援しています。
そして、いつの日かあなたと一緒に働けることを楽しみにしています。
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