関係法令があるものは、「教育的対応」よりも「法的対応」が優先されるべきです。
今は「そういう時代である」と認識して、対応することが必要だと思います。
特に、初任や若手の先生は苦手な部分だと思いますので、法的対応が求められる事柄を一緒に確認していきましょう。
今回扱うのは「いじめ」です。
いじめに関する対応は、感情的に教師の独断で対応すると、大きなトラブルに発展しかねませんので、しっかりと押さえておきましょう。
いじめに関する対応
※いじめ防止法・文科省「いじめ」対応のポイント
学校に対して、保護者からいじめの通報があった場合は次のような対応が必要です。
①設置者(教育委員会)へ報告
定義では「いじめられたと認識した場合」が「いじめ」です。
物理的事象(物を隠す、殴る、罵る)がなく、「消しゴムを貸してくれなかった」「遊びに自分だけ誘ってくれなかった」「バイバイと挨拶したのに無視された」等も、生徒は保護者に「いじめられた」と訴えます。
保護者はそれを聞いて、学校に「いじめられた」と訴える事例が増えていることを覚えておきましょう。
②いじめの有無の確認
関係生徒からの聴取などを行います。
学校は、いじめがあるように思えなかったとしても、法律に基づいて対応することが必須です。
③事実確認の結果を設置者・いじめ問題対策連絡協議会に報告
※いじめ問題対策連絡協議会について
地方公共団体は、いじめの防止等に関係する機関及び団体の連携を図るため、条例の定めるところにより、学校、教育委員会、児童相談所、法務局または地方法務局、都道府県警察その他の関係者により構成されるいじめ問題対策連絡協議会を置くことができる(いじめ防止対策推進法、第14条①)
④被害・加害生徒の保護者に連絡
いじめが確認された場合
被害生徒・保護者の支援と加害生徒指導・保護者助言を行います。
安心して被害生徒が教育を受けられるよう措置をとってください。
いじめが確認されなかった場合
情報共有・説明を当該生徒保護者にします。
これは、加害被害の生徒・保護者間の争いが起きないようにするためです。
注意
保護者が「いじめ」と認識し、学校が「いじめが確認されなかった」と結論づけた場合、トラブルが拡大することが多いです。
この場合、加害者とされた側が「この程度、なぜ加害者になるのか」「子供の喧嘩でなぜ保護者が謝るのか」、被害者側は「いじめたのだから保護者にも謝ってもらわないと納得できない」とトラブルがエスカレートすることもあります。
被害者側が憤り、加害者が反発しても、「法律に従って取り組んだ」と丁寧に説明するしかありません。
この説明をするためにも、初期対応から「法的に対応」することが必要です。
学校が重点的に介入すべき「いじめ」を見極めるキーワード
教職員によって、温度差が大きければ、保護者の不信感や苦情にも次のような視点が必要です。
①「両者の間のパワーバランスは均衡しているか」
腕力の強弱・知的な高低・精神的な強弱・体力や知力の上下・個体差・個人差がある以上、パワーバランスがなくなるものではありません。
問題は「パワーバランスで力の濫用」があるかどうか。
個人への「いじり」は特に注意が必要です。
「ものが言えない」「我慢するだけ」の場合は、教師の介入が必要です。
逆に「反論できる」「周囲が注意できる」場合は、許容もあり得ます。
②「一方、もしくは両方に、思い込みの正義感がないか」
たとえば、次のようなことがないかを確認し、整理しておくことが必要です。
- 自分が正義だと思っているので、相手を正していると思っている
- 相手が嫌悪や恐怖を感じても「間違ったことはしていない」ので罪悪感がない
- 相手がそれを「いじめ」と感じていても、気づかない結果に(教員も同様)
- 「被害者」は「いじめ」と訴え、「加害者」は「いじめてない」
正義は本当に正義とは限らないということを覚えておきましょう。
おわりに
「いじめ」の対応は、若手教員だけでなく、ベテランでも手を焼きます。
昨今の「いじめ」は命に関わるケースも少なくないため、より慎重な対応が求められます。
対応の原則は「組織での対応」と「記録を残すこと」です。
これは、私たちの身分を守るためにもとても大切なことです。
担任が一人で対応するのではなく、必ず学年主任や生活指導主任、養護教諭などの力も借りるようにしましょう。
新年度の始まり、まだまだ忙しい日々は続きますが一緒に頑張りましょう。
応援しています。
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