5月も後半になり、生徒も新しいクラスに慣れてきたことと思います。
慣れてくると起きるのが生活指導。
生徒間でのトラブルでは、しばしば生徒から聞き取りを行うことがあります。
初任者や若手の先生方で、すでに聞き取りを行った先生もいるのではないでしょうか。
なかなかうまくいかなかったいう経験をされた先生もいることと思います。
今回は生徒からの聞き取りを行う上で意識したいことを紹介していきます。
脳のしくみ
最初に「No」と否定すると、あとから「Yes」と言いにくい「脳のしくみ」を紹介します。
人間の脳は、無意識に「簡素化」と「効率化」を求めます。
たとえば、百円硬貨1枚と五百円硬貨1枚の合計600円を持って100円の買い物をするときは、普通レジで百円硬貨を出します。
特別な意図があって、百円硬貨が多く必要な場合は別です。
脳は、意識しなければ、これまでの経験上「簡単」と思われる方法を選択します。
何かについて「No」と否定した場合にも、同じことが起こります。
最初「No」と言ったのに、「Yes」と言い直すためには、
- 過ちを認める
- 「No」を否定する
- 「Yes」に変更する
の3ステップが必要です。
一方、「No」と言い続ければ、
- 「No」と言う
という1つのステップで済みます。
「No」と言い続けた方が『脳としては簡単』と判断するため、脳のしくみ上、「No」を「Yes」に変更するのは容易ではないようです。
なお、強い理性や論理性があれば、その脳のしくみを超えて、判断の変更が行われるそうですが、感覚的な人は「なかなか判断を変えられない」そうです。
最初に「No」と否定 → あとから「Yes」と言わせるのは困難
小さい「Yes」のアプローチ
「Yes」を積み重ねるためのアプローチとして、次のような4ステップが有効です。
たとえば、生徒指導で、ある行為を「したかどうか」を確認する際…
①否定するのが不自然な質問からスタート
「今日は晴れているね」
「明後日テストだね」
②否定される可能性の少ない質問
「昨日どこかに出かけた?」
「昨日テレビ見た?」
③否定されても、「Yes」と言わせる連続質問
「悩んでいることはある?」 → 「いいえ(No)」
「悩んでいることはないんだね」 → 「はい(Yes)」
④「No」と言いにくい形で本題の質問
「昨日一緒に帰ったのは誰?」
「昨日何人かで帰った時何かあった?」
最後は、「きちんと話してほしい」「何があったか話して」と聞いてしまっても大丈夫です。
ただし、いきなり「○○くんと□□しただろ!」と言うのはNGです。
「穴埋め型質問」
「Yes」の積み重ね以外にも、「穴埋め型質問」をすることも有効です。
「否定しにくい」質問から「言い出しやすい」質問にするのがポイントです。
たとえば、トラブルの被害生徒と先生が1対1で話す場面で…3つのパターンを紹介します。
①「○○を目撃した人が誰かいなかった?」 → 「×」これは否定されやすいです。
被害生徒が加害生徒からの仕返しを恐れ、「否定する」ことが多くなりやすいです。
②「○○を誰が見てた?」 → 「△」これは言い出しにくいです。
①よりは話しやすいですが、やはり言い出しにくい質問です。
③「○○を見ていたのは?」 → 「○」
脳は、中途半端な文章を「気持ち悪い」と感じる傾向があります。
中途半端な文章の「穴埋め型質問」は、話しにくい抵抗感を減らす効果もあります。
この質問をしたら、答えがすぐ出なくても5分以上静かに待ちましょう。
おわりに
生活指導の際は、「小さいYes」や「穴埋め型質問」を活用しましょう。
とはいえ、大事なのは日頃から生徒と真剣に向き合う姿勢です。
トラブルが起こらないよう、未然防止・早期発見に努めましょう。
5月も終盤、1学期も折り返しです。
大変な毎日ですが、一緒に頑張りましょう。
応援しています。
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